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平成21年度 第2回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

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木も技も持続・循環・継承させる岩手の住まい

有限会社 杢創舎
〒020-0113
岩手県盛岡市上田提1-21-9

●基本コンセプトについて

 前回は地元の素材生産者と連携する提案で採択を得た。今回は、製材所との連携を強化して幅を広げるため、一部を立木で購入し、他に必要な木材は地元製材工場から購入しながら賃挽も依頼する複合的取り組みを提案した。

●先導的な提案の内容について

  1. 基礎外周部は、全基礎同時にコンクリートを打ち込むことで、強度や浸水対策を講じる。基礎の外枠防蟻木毛セメント板30mm、内枠EPS120mm打込み枠で基礎両面を保護し、中性化対策を講じる。打込み強度はfc30として水セメント比率を低減。

  2. 二重壁構造により、外部劣化などによる万一の雨水浸透などで内部構造本体側が腐食する可能性は少なくなる。外部環境から守られることで、木が長持ちする。

  3. 横架材同士は、渡り顎掛けとして通柱も車知栓継など伝統的な仕口による。横架材の継手は、その強度が通常の鎌継より2倍ほど高いと言われる金輪継を採用する。

  4. 二重壁構造の外側は横貫として、筋違い構造の内側軸組みに柔軟に追随するように計画した。伝統的構造躯体ではあるが、床剛性を確保するために構造用面材を使用する。

  5. 隅柱は5寸角通し柱とし、時間軸・可変性を予測される部分は構造から外して間柱で仕切る。また、躯体を包み込む断熱外皮外側には通気層を設けて湿気による劣化防止。

  6. 基礎は、地中梁 (RC造などと同等) を上部荷重及び水平力から算定配置し、外部構造以外の立ち上がり部分も同時に打ち込む打ち継のない一体基礎とすることで強度を高める。地中梁構造により、内部の立ち上がりがなく、通口による欠損の弱点もなくなる。基礎内部の立ち上がりなくなるかわりに、4寸角3.6mの柱を建ててから足固めになる床組構造を組み上げることができる。それにより、床下空間も最低333mm ~最大800mmまでは特殊な工事をしなくても確保できる。

  7. 認定基準の耐震等級2の計算に加え、任意で偏芯率や剛性率を確かめ、保有水平耐力計算を行い、筋違い量に関しては建築基準法の1.5倍以上を確保する。

  8. 外壁屋内側は胴縁下地とすることで、構造に大きく影響させないで電気配線など暮らしの変化変更に対応する。また、二重壁構造により断熱外皮と設備配線配管部分をある程度切り離した施工ができるので、維持管理の容易性は高い。

  9. いつの時代も、また大手企業も地場工務店も共通して言えるのは、手直しや維持管理の場で活躍するのが職人であること。長年伝承されてきた技術を継承させ得る仕事を継続することや、熟年の職人から若い職人へと伝えていくことができる仕事場の設置をあえて提案する。

  10. 伝統的な木組により、梁の殆どは柱の支えが少なくても安全な断面性能を有しているが、あえて柱を減らすことはしないまでも、構造部以外の壁や天井及び部屋の出入口は取り外しが容易な部分となる。そのため、引き込み建具は吊込みとして溝付きの敷居は極力設けない。

 盛岡市は、次世代断熱基準II地域ではあるが、次世代基準の枠を超えた設備機器に左右されないCO2削減住宅を造り、加えてパッシブ効果を有効に取り入れる手法を暮らしに提案する。Q値≒1.0W/m²・K以下 (応募提案建物は0.8W/m²・K) C値=0.5cm²/m²以下を標準。
壁:セルローズファイバー250mm吹き付け
  充填 + 撥水性ロックウール50mm付加 (防火)
屋根:セルローズファイバー600mm吹込充填
開口部:Low.Eトリプルガラス樹脂サッシ K値=1.23W/m²・K品

●今後の予定について

 地元の山へ適正な金額を還し、地域の製材所が地域に根差した運営を維持していくには、本提案のような地元の山の木で住まいを建てる住宅が普及することも一つの要になると思われる。また、そこに関わる職人の技も次世代に繋いでいかなければならないと強く感じる。加えて、既存の仕組みに固執せず新技術との融合もまた必要不可欠であり、長期優良住宅の認定などを得て施工に臨むことは、良質な住いを長く持たせていくことに自然と繋がるものと感じている。
 本提案の二重壁構造は、新築のみではなく既存住宅の改修などへの対応も可能であり、大工技術があれば誰にでも施工できる。大きな力の枠組みだけでなく、元来地域に存在する小さなところでも、こうして全国に提案できることを素直に喜び感謝し、今後も伝統を守りながら長期優良住宅を普及促進させて行きたいと感じている。
平成21年度 第2回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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