長期優良住宅 Web

第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
長期優良住宅先導的モデル事業とは? 平成21年度 第1回長期優良住宅先導的モデル事業紹介 平成21年度 第2回長期優良住宅先導的モデル事業紹介 第1回超長期住宅先導的モデル事業紹介 第2回超長期住宅先導的モデル事業紹介 REPORT NEWS

木も技も持続・循環・継承させる岩手の住まい

有限会社 杢創舎
〒020-0113
岩手県盛岡市上田堤1-21-9

●基本コンセプトについて

 元の林家と連携して、「立木」から選別した丸太を地元の製材工場で製材及び天然乾燥させ、「手技」による伝統的木組みで架構躯体を造りあげ、耐震・省エネを重視した建物性能との融合を図る事で「持続」させ、今日まで連綿と「循環」されてきた近隣の山の木を中心とする地域の仕組みを超長期耐用住宅と連動して維持管理するためにも、職人技を「継承」しながらこれからも同様に循環させる取り組みを提案。

●先導的な提案の内容について

 共同提案者の林家は、地元岩手県盛岡市近郊の山に約100年間持続的に植林を行ってきた。そして、今後も継続的に素材を提供できる環境ではあるが、丸太販売価格面で再造林が厳しい現状を抱えている。そこで、地場工務店の提案代表者が通常の丸太価格より高く直接購入し、地元の森林組合製材所や地元で小さく営む製材工場で賃挽きし、川上から川下までの流れが全て見える取り組み内容を具体的に提案した。例えば、伐採場所や樹種・植栽年・立木材積・採材後の材積や購入価格に製材工場への搬送及び賃挽き原価全てを盛り込んだ内容を提案書に書き込んでいる。これは、住まいを造るうえで100年200年育つ環境やその予算を適正に還元する事の大切さを伝える事が可能で、ウッドマイレージ削減も数値提示が不要なほど分かりやすい。また、人の手が入る事で地域の山を守り育て、新たな樹木が育ちCO2削減温暖化防止にも繋がり、再度植林しながら地域環境を維持持続させる事は、県土保全の要となる。加えて、伝統構法の横貫や渡り顎掛けなど技術の継承が成され、住まいの保守管理の技術レベルが維持される事も必要との提案も同様に行った。施主も山に訪れ関わる事で、家への愛着が増すからこそ、植えて100年、家造りに使い維持して200年、また植えて100年、林家と共に200年と繋がっていくのではないだろうか。総括として、治山治水・国土保全などを成し遂げてきた林家の歩みや、伝統的職人の手技を、私たちの世代で失う不名誉を阻止し、家を造る過程や住んでからの過程でも、CO2を出来るだけ排出させず、200年後ゴミと化さない建材や手法などを総合的に選定し、原木素材・床壁天井材など地場の協力業者で構成する大きな流通の枠組みと地元の小さなネットワーク双方の共存を図る事を付けくわえ、評価基準は、総合評価CASBEEのSランク以上と設定した。
渡り顎
  1. 耐震性は、建築基準法で壁倍率を認められる構造面材にて確保しながら4寸角の柱を半間ごとに立て、横貫を貫き通す伝統的構造として大地震に備えた。

  2. 横架構は渡り顎掛けや車知栓継など伝統仕口の架構とするが、各梁に段差があるので構造面材による床剛性を確保する難しさがある。そこは今後の課題としたが、構造計算等により一定の安全性は検討する。

  3. 岩手県特有の樹種の採用として、床梁は岩手を代表する粘り強い南部赤松・柱や小屋梁に地杉材・土台は遠野ヒノキ。全て幅4寸以上とし、曲り梁も積極的に使用。

  4. 隅柱は5寸角通し柱とし、中央部の梁継ぎ手位置にも同様に5〜8寸通し柱を配置して車知栓継などにて強固に組み固め、時間軸・可変性を予測される部分は間柱で仕切る。

  5. 基礎は、外枠が防蟻処理木毛セメント板30mm、外枠内側が経年変化の少ないノンフロンビーズ法ポリスチレンフォーム保温板150mmとした。これらを基礎内部の枠と同時に吊り込んで耐圧板基礎と立ち上がり基礎全てを一体打ち込みとする。

  6. 維持管理として、床下空間は階段室から下りて床下に入り込める高さを確保し、浴室スラブ下にもぐり込める事により、点検メンテナンスを容易にした。

  7. 維持管理の場で活躍するのが地域の職人であり、そうした職人の長年伝承されてきた技術を継承させるには、日々の仕事の中で伝えていく方法しか無いと思われる。そうした仕事を継続する事や、熟年の職人から若い職人へと伝えていく事が出来る仕事場を設ける必要性をあえて提案した。

  8. 建設地の次世代断熱基準Ⅱ地域の枠を超えたQ値≒1.3W/m²・K C値=1.0cm²/m²以下を提案。開口部は、引違い窓の通風効果や外部と内部の関係性を生かすために、引違いサッシを多用するが、引き違い窓の室内側にはペアガラスを木製枠に組み込んだ建具を2重に取り付けて、冬場は冷気の流入を防ぎ夏場は通風や開放性を大きく得る事ができる。

  9. 暖房は、木質バイオマス (薪ストーブ) とするが、熱輻射方式の暖房など併設した全館暖房とする。ペレットも含めて木質バイオマスを生かした省エネ住宅が可能であり、電気使用量を節約して総合的なCO2削減を提案できる。

  10. 超高齢化社会への備えも重要課題と捉え、住人が変ったとしても等しく求められる要素に間違いない。増築・減築を考慮した敷地計画に言及し、独居住宅や要介護となった場合も想定したバリアフリー住宅を提案。高齢者等への配慮等級4以上、室内建具は引き込みとしているので開け放しても邪魔にならず、部屋をより広く使う事や逆に仕切るなど、日常生活のみならず超高齢化社会や独居・介護住宅への空間のバリアフリーも平面計画に盛り込んだ。
第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介
Top Page 第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介 INDEX