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平成21年度 第2回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
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『住みながら耐震化』を実現する既存マンションの総合的延命化プロセス

株式会社 長谷工コミュニティ
〒108-8383
東京都港区芝4-6-6

●基本コンセプトについて

 本事業は、新耐震基準をみたさない既存マンションを対象に、今後の長期利用を前提にした総合的な延命化措置を施すプロセスを提供する事業である。対象としては、いわゆる「第二世代」(1971〜81年建築確認) を想定した。
 これらのマンションの長期利用には、その間に遭遇する可能性も高まる大地震のリスクに対処するため、耐久性能の向上とあわせ耐震性能の確保が必須である。しかし、耐震改修については、資金負担の問題のほか、大掛かりな改修工法には敷地や計画平面の余裕が必要であり、美観や居住性が損なわれることも障害となる。また、現建物の耐用可能性の情報がなく、将来の利用に向け明確なビジョンを持てないことも、高額な耐震改修をためらわせる一因である。
 これらの事情から、耐震改修を含む耐用化改修には、低廉かつ生活への影響が軽微な改修工法と、将来的な耐用可能性への所見情報及び実行方策をあわせて提供することが必要といえる。
 本事業は、その実現方策として、総合的な建物診断および長期修繕計画の検証と、既にある計画修繕事業を協調連動させた「住みながら」の長期耐用化+耐震化の改修とを、合わせて提供するパッケージ事業として構築した。
 本事業は二段階の構成をとる。まず着手時には、修繕履歴や既存の長期修繕計画を前提にした総合診断により、マンションの現況と長期利用の可能性を検証する (第 I 段階)。さらに診断結果に基づき、今後の計画修繕による対策を分離した上で、耐震改修・躯体保護のため新たに必要となる長期化対応策を実施する (第 II 段階)。

●先導的な提案の内容について

1.将来ビジョンと対策を方向づける総合診断
 修繕履歴と建物現況に基づいて長期利用の可能性を判定し、建物及び運営の両面からマンション利用の長期ビジョンを提案するとともに、これに対応した長期耐用化対策や、今後の長期修繕計画を編成する。計画修繕で対処できる項目は長期修繕計画に反映させ、本事業の要件とはしないが、30年間で20万戸の大規模修繕実績を持つ長谷工グループの技術とノウハウによる長期耐用技術を提供できる。
 
2.総合診断に基づく長期耐用化対策
 長期耐用化対策は、「住みながら」施工を実現する耐震補強 (1) と、鉄筋コンクリートの耐用年数延長改修 (2) の2つを基本メニューとしている。
 (1)(2) の対策は、ともに実施の時期を大規模修繕工事と連動させ、その一部として施工することで、生活保全と費用の両面で、居住者負担をさらに軽減できる。

(1) 既存のそで壁付柱を活用した耐震補強 (「住みながら」耐震改修)
 一般の耐震改修でよく使われる外枠フレームや耐震壁・ブレース等の増設は、重機での施工や美観影響など負担が大きい上に、空間利用に制約を生ずるなど適用範囲が限られていた。本工法は、そで壁付柱の共用部側に高接着性の特殊ポリマーセメントモルタルを施工し、数cmの壁厚増で効果的な補強が得られる耐震補強工法である。専用部に工事が及ばないうえに、重機や足場を必要としないため、「住みながら」の施工が実現する。従来の工法に比べ低コストの補強を実現できることに加え、工事後の建物外観への影響や共用空間の使い勝手の変化も最小に止めることができる。
 
(2) 鉄筋コンクリートの改修と耐用年数の延長 (中性化抑止と鉄筋保護)
 診断を経て設定された長期利用の目標を実現するため、部位ごとの詳細な検査を踏まえた適切な対策を施して、鉄筋が腐食 (発錆) する原因となるコンクリートの中性化を抑止し耐用年数を延長させる長寿命化工事を実施する。コンクリートが中性化し鉄筋の腐食が発生した部位では、亜硝酸系イオンにより鉄筋皮膜を回復する。中性化の進行がみられる部位では、防錆効果のある特殊ポリマーセメントモルタルを塗布する。さらに、外部からのコンクリート劣化因子の侵入を長期にわたり防ぐガスバリア性の高い高耐久性複合塗料により、躯体全体を保護する。

●今後の予定について

 新耐震基準をみたさない集合住宅の耐震改修は必ずしも順調ではない。特に既存の分譲マンションでは、それぞれの住戸が個人資産であり、区分所有者の合意により運営されるという固有の事情が改修の事業化を困難にする傾向がある。
 例えば「住戸間の不平等」「居住性や外観への影響」を伴う改修案は合意を得にくい。また、躯体や設備の劣化状況や、対策によりあと何年利用できるかといった技術判断がなければ、個人の思惑が先行して積極的な投資に至りにくい。
 本提案は、これらの問題点に直接的に対応し、長期利用を志すマンションを支援するものである。先導的モデル事業に採択されたことで、先行事例の事業化が実現し、その実績が、後に続く多くのマンションに長期利用の途を示すことに期待したい。膨大なストックを含めたマンションの健全な運営と発展に、事業者として微力を献じていきたいと考える。
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