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平成21年度 第2回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
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根本からみつめなおしてちゃんとした家をつくる「風土木の家」

淡海里の家事業協同組合
〒527-0023
滋賀県東近江市八日市緑町37-3
(池田建築計画)

●基本コンセプトについて

1.地域の山の木を活かし、地域を元気にする家づくり
 滋賀県には多くの森林があるものの、現在では林業の衰退が著しく山村は元気をなくし限界集落と呼ばれる地域も増えている。
 私たちは地域の山の木を家づくりに活かすことで、山村を含めた地域の再生につながると考えている。
 
2.自然素材を用い、伝統的な技術を現代に活かす
 木材や土などの自然素材は100年前も100年後も存在するであろう普遍的な材料である。また、有害な化学物質の心配もなく将来廃棄されたとしても土に還る環境にやさしい材料である。これらの自然素材をベースに使い、伝統的な技術を活かした家づくりを行うことで、地域で培われてきた職人の技術を次の世代に伝えてゆく。
 
3.自然の恵みを穏やかに受け留める
 冬は南の窓からの日照をダイレクトゲインとして取得する。夜は引込み障子等を閉めて熱を逃さないようにする。夏は日照を遮るために適度に深い庇を設ける。また、東西の窓にはすだれを掛けられる深めの庇を設ける。
 南に大きな開口と深い庇を設け、その開口からは冬には深く日が差し込む。吹き抜けと階段によって家全体の空気のサーキュレーションが発生して上下の温度差を無くし、屋内気候をつくる。
 土塗り壁は屋内では真壁とし軸組みは表しとする。土塗り壁は外に断熱を施す事により蓄熱体となる。又土塗り壁の吸放湿作用により屋内環境が安定する。

4.地域の風景に溶け込み、愛着のある町並みをつくる
 屋根は日本瓦又は鋼板とし外壁は左官壁又は板張りの仕上とし、建物形状は総2階+下屋の形状とする。使う素材・色・形状に統一感を持たせることで、親しみの持てる落ち着いた町並み形成の基本形となる。奇をてらわない普遍的なデザインは、いつまでも長く愛され続け、次の世代に引き継がれてゆく。

●先導的な提案の内容について

1.地域材を活用するしくみをつくる
 滋賀県では残念ながら地域材がスムーズに流通していない。地域材をより一層活用するためには、材を規格化し乾燥・ストックして安定供給できるしくみをつくることが重要である。
 そのために私達は、湖東地域材循環システム協議会と連携しながら、従来の製材所での乾燥・ストックに加え、共同での乾燥・ストックや工務店での乾燥・ストックを進めてゆく。
 
2.伝統の技術を現代に活かす 設計上の工夫
 職人の手仕事による伝統的な工法を基本とするが、それを現代に活かすための工夫をする。
 総2階+下屋の建物形状をベースにし、架構とプランが一致する無理のない構造体とする。耐久性が劣る浴室などの水回りは下屋部分に設け、将来の改修を容易にする。耐力壁をバランスよく配置して大きな地震力の負担が無いようにし、極稀に起こるとされる地震での安全性は限界耐力計算で確認する。
 内部は真壁で構造体を表しにし、異常が生じた場合の発見を容易にする。また、整理された木組みの構造体を見せることで、デザイン的にも魅力的なものとする。
 
3.地域の職人・工務店・木材業者・設計者のネットワークによる家づくり
 「淡海 (おうみ) 里の家事業協同組合」では、履歴情報の整備や地域材の供給支援など個々の組合員独自では対応が難しい部分を組合でサポートしながら各組合員の持つ技術を活かせる環境づくりをしてゆく。
 伝統技術を活かした地産地消の家づくりを広めるため、市民向けのセミナーやプロ向けの勉強会を定期的に行っている。家づくりを通して環境のことや地域の林業のことや自分たちの暮らしについて考えるきっかけをつくり、市民の中に共感の輪を広めてゆく。

●今後の予定について

 伝統構法は、長期優良住宅の理念に答えられるポテンシャルを元々備えている、最もふさわしい構造形式であると思える。
 しかし現実的には伝統構法の長所を生かした長期優良住宅の実現は困難になっている。長期優良住宅の基準は概ね必要なものであるが、耐震等級2は伝統構法に則さないものである。壁量計算では不要な金物を大量に使用しなくてはならないし、許容応力度計算では金物は減るが壁量はほとんど減らない、構造特性に合わない堅い建物になってしまう、限界耐力計算によった場合でも安全限界の変形角が1/40では構造特性が生かせない、しかも現状ではピアチェックを義務つけられ費用と時間の面で一般的ではない、伝統構法に関してはこれらの改善が望まれる。
 現在2件の住宅の設計を進めているがその内1件は長期優良住宅の適合をあきらめざるを得ないと判断した、それは足元を石場建てにして伝統構法の構造特性を純粋に実現する住宅である、理由は限界耐力計算で安全限界の変形角が1/25になるためである、実験で安全性が確かめられているデーターを使って確認しているのにかかわらずである、耐震等級2以外は全て適合している。
 もう1件は土壁に合板を加え許容応力度計算で進めている、筋交の使用は避けられたが、堅くなりすぎている、特に2階部分が必要以上に固くなりすぎる、バランスを良くすることで現在のところ良しとして進めている、これが私たちの先導モデル最初の1棟となる予定である。
平成21年度 第2回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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