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平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

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既存住宅の流通促進にかかわる
ホームインスペクション情報データベースシステム

NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町3-12-9 NIビル

●基本コンセプトについて

 わが国の不動産市場が持つ課題のなかで特筆すべきは住宅の資産価値であろう。日本の住宅は新築のときに最もその価値が高く、購入して人が住んだ瞬間に15〜20%も価値が落ちる。そのまま10年でおおよそ半値となり、25年程度で価値はほぼゼロとなってしまう。
 この課題はかつて、たとえ建物の価値がゼロとなったとしても、それを上回る地価上昇があったために、さほど問題視されなかった。ところがバブル崩壊後、土地神話プレミアム剥落やGDP減少とともに、住宅の市場価値は下落の一途をたどっている。
 住宅ローン返済が終了する頃には土地値となってしまう住宅では、地価が上昇局面にでもない限り、住替えには多額の資金が必要となる。そのため日本ではなかなか、住替えは促進されない。ライフサイクルやライフスタイルの変化に伴い、住宅所有者には本来さまざまな選択肢があるはずだが、多くのケースで金銭的な理由から消極的に「リフォームをしてそのまま住み続ける」という選択をする。結果、生涯に住み替える平均回数がおよそ7回といわれるアメリカに対し、日本は2回程度である。
 また現在の既存住宅は、修繕によって長く利用できる建物が数多く存在するにもかかわらず、所有者による適切な維持管理が行なわれないまま流通するケースがほとんどだ。前述した建物の価値が適正に評価されない市場や、所有者の維持管理に関する知識不足がその背景にある。
 同時に、既存住宅の価値を判別するのに必要な図面やメンテナンス記録など、いわゆる「住宅履歴」保管のための慣行や仕組みもこれまで存在しなかった。これらは消費者が既存住宅購入を敬遠する大きな要因となり、結果として既存住宅流通増加に歯止めをかけていると言える。

●先導的な提案の内容について

 日本の住宅の価値が維持され、既存住宅流通が活性化するためには、住宅取引時の診断(ホームインスペクション)による現状把握と、それを資産性に反映させる仕組みが欠かせない。弊団体では、住宅診断業務の品質確保と診断データ蓄積によって、流通活性化のために必要な情報を開示していくとともに、消費者や不動産業界関係者に対し、住宅維持管理や現状の把握に関する啓発を行なう。長く社会資産となる優良住宅を蓄積し、個人の豊かな住生活はもちろん、日本経済において既存住宅流通による安定した内需を生み出すことを目的としている。
 提案内容は以下のとおり。
  • WEB報告書システムの採用により全国一律の調査項目による住宅診断報告書の作成
  • 診断記録の保管、診断結果の参照、リコール製品検索機能の活用、住宅診断データの不動産情報への提供を目的としたデータベースの構築
  • 診断士に対する既存住宅の診断項目、診断基準および診断方法の普及・共有化
  • 既存住宅における建物の診断項目・診断基準の創設、診断手法等の開発
  • 診断結果を売買時に適切に活用できるようにするための情報提供と啓発活動 (不動産事業者、おもに不動産仲介事業者向け)
  • 生活者向け啓発活動 (建物に対する意識や建物を適切に維持管理して長く利用するための方法など)
 本提案の具体的な内容は以下のとおり。
 診断士 (ホームインスペクター) によって調査項目やスキルが異なることで、消費者に提供される情報にばらつきが生じないよう、診断時に確認が望ましい箇所や項目を定め、診断基準として運用する。所有後、参考になると思われる修繕アドバイス項目等も共有する。診断結果を弊団体が開発するデータベースに蓄積し住宅履歴を形成するとともに、それらデータを売買時等の情報として広く提供していく。
 また信頼性の高い診断士育成のため、継続的な講習会や会員への考査を実施。診断において目視では確認しにくい箇所を診断するための方法も開発し、会員へ情報提供を行なう。より効率的かつ正確な診断のための機材等についても研究する。
 既存住宅の診断においては築年数・工法等によって、求められる知識・経験が異なるため、消費者や不動産事業者が該当物件に適した診断士に診断を委託できるよう、診断士に関する情報開示を行う。例えば診断士が保有する国家資格、弊団体主催の講習会講習履歴等のデータベース掲載である。それらをもとにした診断士検索機能も設置する。

●今後の予定について

 本システムが早急に一般化し、不動産売買時に広く利用されるためには、住宅診断に関する消費者や不動産事業者の十分な理解が不可欠である。住宅診断を活用した安全・安心な不動産売買の普及を目指し、消費者向けのシンポジウム・セミナー開催や、不動産事業者向けの研修を開催する。とくに不動産事業者に対しては、診断結果を消費者へ適切に説明できるよう、定期的な解説技能講習を行なう。
 わが国の優良住宅ストック形成と既存住宅流通促進、豊かな住文化醸成を目的とした本提案は以上である。
平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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