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平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
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地域に住み続けるための高齢者住宅再生事業

平倉建設 株式会社
〒870-0049
大分県大分市中島中央3-1-11

●基本コンセプトについて

 築後年数が40年近くの鉄筋コンクリート造の建物は、建物所有者、使用者や不動産関係者にとっては、コンクリート強度や鉄筋量、配筋状態など外見から判定できない品質要素が多いことから、機能的な耐用年限が到来すると、改修し再使用する選択が経済的に優位な場合も、一般的には老朽化を理由に廃棄・解体を選択する。
 大分県でも高度経済成長期に大量に建設された住宅、学校、事務所や店舗が、その時期を迎えつつあり、文化的な価値を有する建造物でさえも、改修・転用が検討されずに解体する方針が決まる状況にある。
 したがって、良質な建築ストックが、適切に改修され使用が継続されるには、的確に改修する建築技術の基盤を築くとともに、いわゆる中古の建築に対する社会意識の変化が重要であり、そのためには分かりやすい実例を提供し広く知っていただくことが必要。
 また、高齢化の進展により、高齢者住宅や施設 (安心して暮らせる場) の必要性は急速に高まり、多様な高齢者施設が求められている。一方で、昭和30〜40年代の人口の急増期の開発団地に大量に建設された共同住宅は、エレベーターがなく設備が陳腐化していることから、廃棄され解体されている。高齢者施設を新築で供給するには限界があることに加え、環境コストなど社会経済的な視点からは、これらの既存建物ストックを改修し再利用することが望ましい。
 本事業は、高度経済成長期に建設された大量の共同住宅のストックを高齢者施設として再生する社会的要請に応えるとともに、住民の高齢化を因とする売上げ不振による団地内店舗の閉鎖が増え、高齢者の暮らしを危うくしている問題の解決を図るため、団地のコア施設であった商住複合施設を、商業を併設した高齢者の介護施設と居住施設に改修する計画を提案内容としている。
 特に、改修後の建築品質に対する不安を払拭するために、既存建物の品質、改修工事の内容などに関する情報を徹底して開示することを予定し、また民間市場で流通・投資の対象として扱われるために、改修品質を説明するツール (建築品質の見える化=建築品質カルテ) を提案する。

●先導的な提案の内容について

(1) 高齢化社会の必要に応じた既存共同住宅の高齢者住宅への改修・転用
 高齢者が介護ケアを受けながら、現に住むコミュニティーで生活し続けることは、交流の継続や心のやすらぎ、家族のサポートの容易さの面から望ましいとされるが、そのためには、多くの住宅地に多様な高齢者施設が供給されることが必要となる。
 本事業は、団地のコア施設であった商住複合施設を改修する事業である。
 建物は、新産業都市建設に伴い人口が急増した大分市に最初に開発された団地 (市の中心から約4kmに位置し、企業と公共の賃貸住宅と分譲戸建住宅で構成) の中心施設として、昭和40年に竣工した鉄筋コンクリート造4階建ての商住複合施設 (1F商業施設、2〜4F共同住宅 (24戸) のいわゆるゲタ履き住宅) となる。
 改修後の用途は、1階はデイサービスを中心とする介護施設 (店舗を併設) とし、2階から上は高齢者専用賃貸住宅 (42戸) とする。
 住宅は、従来の1住戸を2戸に区画し、エレベーターと各階に共同利用施設 (台所、食堂、居間、浴室など) を増築する。必須であるバリアフリー化に加え、耐震性能を確保し省エネルギー性能の向上を図る。
 
(2) 暮らし続けられる団地の基盤を再生する
 改修建物は、団地の唯一の利便施設として、また地域コミュニティーの核として機能してきたが、団地住民 (現在人口3,090人) の高齢化などに起因する売り上げ不振から、商業施設は平成20年に閉店した。また上階の共同住宅は浴室が無く、所有が共有であり権利者間で増築工事等の合意ができないことから、長期間の空家となっている。高齢化の進む団地の住民の皆様は、唯一の店舗が無くなったことから暮らしの不安を抱え、建物が再生されコミュニティーの再生が進むことを熱望している。
 
(3) 土地・建物の所有関係の再整理の推進
 土地は公社が所有し、建物は、民間が1階の商業施設を、公共団体が2〜4階の共同住宅を共有する区分所有建物となる。
 権利者間での調整が困難であったことから、耐震補強工事も実施できず、再使用を計画できない状況が続いていたが、全面的改修と増築の手法を適用すれば、事業性の高い建設投資となることから、すべての権利を民間事業者が一括して取得し、高齢者のための施設に再生する計画を進めることとしている。
 
(4) 中古の鉄筋コンクリート造建築物の「品質の見える化」
 既存建築の品質 (ビフォア) の調査記録と改修後の品質 (アフター) を分かりやすく提示するために、調査・設計・施工の記録を〈建築品質カルテ〉に整理する。
 
(5) 成果の普及
 建築改修は、見学により効果の確認が容易であり、また改修後の入居募集に際しても希望者の不安感を解消できることから、すべての建築工程を公開する。
 また工事記録書類は、常に備え付け閲覧可能とする。さらに改修工事内容を的確にお知らせするために、現場のライブ映像または静止画及び図面等をインターネット公開する。
 専門家等に対しては、成果を共有できるように公益団体と共同して研修会を開催する予定。
平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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