平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

　北海道 (庁) では、消費者が既存住宅を安心して購入できる仕組みと良質な既存住宅の流通を促進する仕組みを構築するため、学識経験者等による委員会を設置し、平成17年度から3年間にわたり検討を行ってきた。さらに、その一環として、その仕組みを検証するために、平成18・19年度に民間事業者の協力を得て、実際に住宅改修を行う社会実験を行った。
　平成20年度には、これまでの検討成果を踏まえ、民間事業者が中心となって「北海道R住宅推進協議会」を設立し、既存住宅流通促進の仕組みについて平成21年度からの市場への導入を目指し、制度構築に係る検討を経て本モデル事業の提案に至る一連の成果を得ている。
　本モデル事業においては、既存住宅の改修に係る現況調査から履歴保管・住宅品質表示に至る一連の取組を、住宅市場・リフォーム市場における先導的かつモデル性の高い社会システムとして提案している。
　また、中小工務店が既存住宅の良質な住宅ストックの形成に取り組むことにより、北海道全体の住宅性能・耐久性を実質的・効果的に引き上げるとともに、北海道の住宅産業において、地方中小工務店が長期優良住宅を実現するための高い技術力を持つことにより、地域の活性化に寄与することを目指し提案を行っている。
　本モデル事業の提案にあたっては、事業の円滑な推進と地域への普及を目指し、北海道R住宅推進協議会が全道に呼びかけて参集した71社の住宅改修事業者・不動産事業者と北海道R住宅推進協議会・北海道立北方建築研究所からなる「北海道R住宅先導的モデル事業推進協議会」を設立し、取り組みを進めた。

　既存住宅を改修し長期間の使用に耐えられるようにするために、第三者による客観的な現況調査に基づいて、耐久性、耐用性、耐震性、省エネルギー性など長寿命化に必要な性能向上を図ることを目的とした改修を行う。
　また、改修前の既存住宅の性能を把握することは極めて重要であることから、省エネルギー性を向上させるために温熱環境の専門技術者(BIS資格者)が温熱環境計画を策定する。改修後には気密性能試験を実施するとともに、改修前の現況調査記録、改修工事記録、将来の30年間にわたる維持管理計画を作成し保管することとする。さらに、消費者が改修後の住宅の性能がどのようなレベルにあるかがひと目でわかるように、住宅品質を表示するしくみを検討し、取り入れる。
　
(1) 北海道住宅検査人 (第三者) による既存住宅の現況調査と改修内容等の提案
　施工事業者ではない第三者である北海道住宅検査人により現況調査を実施し、その結果のカルテを作成し、所有者等に対して長期使用に必要な改修内容等について助言する。
　
(2) 専門技術者による住宅の性能向上リフォームの実施
　事業者は、1) 耐久性 (例えば、相当隙間面積C値:2.0cm²/m²以下とする)、2) 耐震性 (現行建築基準法と同等)、3) 省エネルギー性 (熱損失係数Q値:1.6w/m²k以下とする)、4) 既存設備の点検・交換・更新、の全ての性能を満たす性能向上リフォームを行う。
　
(3) 改修後の住宅品質の表示
　消費者が改修後の住宅の性能をひと目でわかるように、耐久性能・断熱性能・気密性能・高齢化対応等の項目について表示を行う予定。
　
(4) 改修履歴の記録と保管 (「既存住宅安心サポートシステム」の活用)
　既存住宅専用ソフト「既存住宅安心サポートシステム」により、現況調査、設計・施工データ、維持管理計画、気密測定結果等に関する記録作成・保管等を行う。

　本モデル事業に提案した｢既存住宅の新たな改修システム｣とそれを支える各種取組・制度は、住宅市場・リフォーム市場において、既存住宅の改修の全ての段階に対して、公平・公正な役割を担うことができる社会システムそのものと位置づけることができる。この社会システムを通して、消費者が既存住宅を安心して購入できるとともに、良質な既存住宅の流通が促進される住宅市場づくりが実現することを目指し、本モデル事業に取り組んでいく考えである。