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平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
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逆梁二重床工法を用いたSI賃貸集合住宅

三和建設 株式会社
〒532-0013
大阪府大阪市淀川区木川西2-2-5

●基本コンセプトについて

■賃貸集合住宅のこれまでと課題
 我が国の賃貸集合住宅は、高度成長とともに安定的かつ大量に供給されることが優先され、必ずしも住空間の快適性や建築の長期性という観点は重視されてこなかった。一方これまでの間、入居者にとっても「賃貸マンションは必ずしも終の棲家ではない」という認識が一般的にあった。このため、少子高齢化や人口減少による国内経済の成熟化、また入居者のニーズの多様化に伴い、かつてのように画一的な賃貸集合住宅の供給は市場のニーズとマッチしなくなってきた。それにもかかわらず、一般的な賃貸マンションは時代のニーズに対応した抜本的更新 (リノベーション) を行うことを前提とした設計になっておらず、築後30年も経過すると事実上その寿命を迎えることが多い。
 そのこともあり、賃貸集合住宅事業は、新築後30年間乃至35年間のスパンにおける投資利回りによって評価されることが一般的である。賃貸マンションを建設して貸家として供給する立場にある土地所有者 (地主) にとっても、30年が寿命では賃貸住宅事業は収益事業として必ずしも魅力ある選択肢とはいえず、良質な賃貸集合住宅の供給に対する障害となっている。
 このように我が国における良質な賃貸集合住宅の供給については、住み手にとっても家主にとっても建物もしくは賃貸事業の30年相当という寿命が大きな制約条件となっており、集合住宅建築の長寿命化が重要であると考えられる。
 以上の議論を前提に「鉄筋コンクリート造による賃貸集合住宅を前提とした長期優良住宅」を提案する。

●先導的な提案の内容について

(1) 超長期に対応する耐久性あるスケルトン
 スケルトン (躯体) の耐久性に大きく影響するコンクリートの耐久性を、「高密度コンクリート工法」によって向上させる。構造体コンクリートの施工に関しては余剰水を極力排除したコンクリートを打設する「高密度コンクリート工法」により、コンクリートの乾燥収縮ひびわれを抑制する。それにより鉄筋コンクリート構造躯体の耐久性を大きく向上させる。
 
(2) 時代による入居者ニーズの変化に対応できる可変性に優れたインフィル
 逆梁二重床工法を採用することによりメンテナンス性と可変性を向上させる。
  • 本提案においては、専用部の床面を、鉄筋コンクリート造の逆梁の上に高さ150mmの鋼製ビーム材を架設することで構成される。鋼製ビームは、断面をギリシャ文字の∑型とすることで曲げ剛性を飛躍的に高め、3m程度のスパンとすることができる。これにより、スパン3mにわたって床下に高さ (深さ) 600mmの束がない空間が確保される。
  • 設備機器や配管が、床下に設置されることによって、仕上材によって完全に閉塞されることがないため、設備の維持管理の容易性が向上する。床下を人が自由に移動でき、床下に配置された設備配管に直接アクセスすることが可能となる。
  • 高さ600mmの床下空間によって、排水管の勾配を確保する余地が増大するため、水周りの自由な再配置が可能となり、時代の経過に伴う入居者のライフスタイルの変化に対応できる更新性を飛躍的に向上させる。
(3) スケルトンとインフィルの明確な分離
 本提案では、専用部の構造体に給排水配管や電気配管を打ち込まず、スケルトンとインフィルを明確に分離する。また、配管はさや管ヘッダー方式を採用し、構造躯体を傷つけずに配管の取り換えを可能にする。
 
(4) 時代を超えて普遍的に入居者から(すなわち社会から)支持される基本的な住環境の確保
 時代を超えて集合住宅に求められる三大要件である採光性・収納性・遮音性を確保し、良質な居住空間を実現する。
  • 逆梁構造とするために窓開口部を高さ2100m以上のいわゆるハイサッシを設置することができ、採光性と通風性が向上する。
  • また、束のない床下空間が広大な収納スペースとして機能する。
  • さらに、束のない二重床が上下階の遮音性を高める。
(5) (分譲ではない) 賃貸集合住宅の特性を生かした可変性に対する工夫
  • 賃貸集合住宅は、分譲マンションのように住戸ごとに権利が分散しているということがなく、複数の区分所有者間における意思統一プロセスなどが不要である。そのため、設計段階でしかるべき対策を講じておけば、建物完成後の改修の選択肢が増える。
  • ニーズの変化に応じて、例えば2戸分を1戸に合体したり、逆に1戸を2戸に分割するようなことが可能となる。
 本提案ではこのような大幅な間取り変更にも対応できる。

●今後の予定について

 弊社は、顧客にとって有益であるのみならず、社会にとってもできるだけ有用な建物を提供する存在でありたいということを企業理念の一つとしてあげている。
 賃貸マンション事業は収益性が第一に問われるため、とかくイニシャルコストの削減に目がいきがちだ。あえて鉄筋コンクリート造の住宅を建設するのであれば、100年・200年先をも見据えた事業であるべきとの考えのもと、今回のモデル事業採択をきっかけとして長期優良住宅の普及に寄与できればと考えている。
平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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