平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

　エス・バイ・エルの長期優良住宅先導的モデル事業は、新築時の長寿命構造をベースとして、住まい手と共に住宅の長寿命化が図れるよう、何世代にも渡って「長く住み継がれていける家」のハード･ソフトを含めたトータルシステムを目指した。特に木質系の建物として構造躯体の劣化については築30年近くの構造躯体の調査データ及び技術の蓄積から独自の劣化診断手法を開発して定期点検に活用できるようにした。これらのことを導入して、きめ細かく永続的にサポートして家のある限り生涯に渡って保証する「生涯サポートシステム」を確立した。

I. 長寿命構造と仕組み (劣化対策・維持管理・維持保全計画「サポート」)
　構造躯体の長寿命化を図るトータルシステムとして1〜4を提案した。

1. 新築時の木質構造材の耐久性を飛躍的に高め、建物完成後も劣化を防止
   　木質構造パネルの含水率は外部通気工法及び壁体内換気システム (二重通気構法) によって概ね15%以下で管理し、壁及び床のうち、劣化のおそれの高い部分の対策を強化 (イ.防腐防蟻剤塗布:外壁は床面から1mまでの高さ、浴室・洗面所は床及び壁の全面に塗布。ロ.高耐久処理木材:浴室・洗面所は間仕切壁に高耐久処理木材/サーモウッドを使用。ハ.浴室・洗面所の湿気対策:浴室の外壁にはパネル内部に吸放湿材を入れて前記二重通気構法、浴室に隣接する洗面所の内装壁下地材には防湿石膏ボードを使用) した。また、屋根のうち、劣化のおそれの高い部分の長寿命化を図るため、軒先の野地板は高耐久処理合板 (防腐防蟻剤単板加圧注入処理) を使用した。
   
   
2. 維持管理として床下・小屋裏以外に外壁の構造躯体を定期点検時に劣化診断
   　維持管理において、これまでの技術の蓄積を踏まえた独自の劣化診断の仕組みを定期点検に活用。そのための「高耐久化システム技術 (LOOP:Long Owner Program)」を確立した。
   
   
3. 劣化部分の補修時に他の健全な部分を破損しない構造及び取り付け方法を採用
   　劣化診断結果から補修が必要な場合の木質パネル構法独自の簡易な補修方法を提案した。
   
   
4. 上記1〜3により、建物がある限り超長期に保証を継続
   　昨年度採択された「劣化診断推定評価システム」提案は上記2の「高耐久化システム技術 (LOOP:Long Owner Program)」として強化し、本年1月から当社の全住宅に採用。定期的な劣化診断 (履歴管理を含む) を組み込んで新たな超長期保証継続制度 (生涯サポートシステム) の仕組みに導入した。

II. 安全性 (耐震・防耐火性)
　長期間の安全性確保のために耐震性及び防耐火性を高めるために、1及び2を提案した。

1. 長期間に予想される大地震に対して構造躯体の損傷を少なくする。
   　耐震等級は「構造躯体の倒壊等防止」等級3、かつ「構造躯体の損傷防止」等級3として大地震時の構造躯体の損傷を最小限にした。
   
   
2. 火災・台風等に際して一定以上の性能を具備して建物の焼失を防ぐ。
   　防耐火性は「省令準耐火構造」又は「準耐火建築物」の性能として火災時の安全性を確保し、建物の焼失を防ぐようにした。また、耐風等級 (構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) は等級2として、台風や突風等による安全性を確保した。

III. 住戸空間の可変性
　長期間のライフサイクル・ライフスタイルの変化に対応するために、1及び2を提案した。

1. 1階の躯体天井高を間取り変更等容易にする高さに確保。
   　戸建住宅においても1階の躯体天井高 (1階床パネル上端から2階床パネル下端まで) は2,700mm以上確保し、間取り変更等を容易にして家族構成や生活様式の変化に対応しやすくした。
   
   
2. 耐力壁は高設計倍率として内部空間の可変性を高めた。
   　耐力壁は全て高設計倍率4.7を配置することにより、大きな開口部や建物内部の耐力壁量を少なくでき、間取り変更等の際に内部空間の可変性が高まるようにした。

　当社は今後も“ずっと強い”住まい、“ずっと住み続けられる”住まいをスローガンにして技術の進展に資するとともに、長期優良住宅及び先導的モデルの普及啓発を積極的に行っていく所存である。