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平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

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里山長屋暮らしプロジェクト

里山長屋暮らしプロジェクトチーム
〒185-0034
東京都国分寺市光町2-1-25-1F

●基本コンセプトについて

 日本の住宅の寿命は約30年と言われていて、諸外国と比べて短命であるが、そうしたサイクルで廃棄されるのは、その物理的耐用年数を過ぎたから壊されるのではなく、利用価値においてニーズに合わなくなってきたから、という事情が大きい。解決すべきなのは長寿命のハードや装置だけではなく、良好な住環境を創造し、維持する仕組みなのである。長きに渡って、住まい手にとって「住んでよかった、次世代にもこの良き住まいと環境を引き継ぎたい。」と感じられるような住環境づくりを本件では提案したい。

●先導的な提案の内容について

 これから住まい手が永続的に安全で、安心してその場所で暮らして行ける住環境づくりの二つの大きなテーマを提示している。ひとつは「環境と調和するサスティナブルな暮らし」であり、もうひとつは「隣人とのつながり感のあるコミュニティのある暮らし」である。
 現代の産業 / 経済文明は、諸問題に対して対症療法的に解決してきたが、それがまた新たな問題の火種を生んでいる。これからは瑣末な事象への対応だけにとどまるのではなく、課題を総合的、包括的、ホリステッィクに解決しようとする姿勢が必要であり、本提案ではそれを実現するキーワードとして「里山」と「長屋」を挙げている。
 「環境」「食」が現在大きな課題となっているが、これらは人間の根本的な生存に関わる問題であり、それらが安全に担保されて始めて、人々は幸福感の前提に立つことができる。現在いみじくも人々の関心が「農的」なことへ向かっているが、それにより人間らしさを取り戻し、安心を得ようとしているのである。それが「サスティナブル (持続的) な暮らし」の入口に立つことになる。
 今回の計画地が「里山」にあるため、自然豊かな環境を活かした計画とし、そこで暮らす人々が仕事の合間に菜園や畑を耕しながら自律的、持続的に暮らせる居住計画としている。自然素材ほぼ100%、かつ地元の地産地消材の木材及び職人さんを活かすような家である。こうした家は、地域および自然環境のなかで自律的、循環的な仕組みでつくることができる。また現在「食」の問題は、環境と生活者を危険にさらすという大きな課題を抱えているが、農的な暮らしの住環境は、自らがつくる安全で安心な食を自給してくれる。人々が自ら手を動かし、自らが生産することで、人間らしい姿と住環境を取り戻すことになろう。
 建物の外観は自然素材感を充分引き出すようなデザインとし、周囲の自然と調和するとともに、日本の里山の原風景となるような風情としたい。
 また、できるだけ化石資源を使わない仕掛けを搭載し、太陽熱エネルギーの利用や雨水利用、パッシブなデザイン手法を採用する。生態系と調和したデザイン手法である「パーマカルチャー」の考えなども取り入れ、できるだけ環境に対する負荷を低減する。
 「長屋」では、農的な暮らしを接着剤として、住人同士が人間的なつきあいをし、緩やかにつながるコミュニティを形成することを目標像としている。
 その仕掛けが、住戸を横並びの「長屋形式」とし、1世帯分の居住部分を「コモンハウス」と呼ぶ住人の共同所有としたものである。これは住人皆が自由に使える空間として、恊働で料理や食事、農作業などを行う。また、その居間は地域へも開かれた空間として、セミナーやイベントを行うこともできる。昔ながらの「長屋」的な暮らしをここでイメージし、日本らしいコミュニティのあり方を模索する。人々が支え合ながら暮らすことで、孤独感や物理的な不都合 (子育て、介護、車の共同所有等) を解消することができ、そうした生活空間が安心感と安全感を生み、地域の住民にとっても「かけがえのない場所」となることを目指している。
 こうして「環境」と「人」と「住まい」がつながることで、長きに渡って住環境を維持していこう、というインセンティブが生まれる。現在必要な議論は、「物理的に住宅を長寿命にする」という一元的な問いではない。いかに愛着をもって、そこに「住み続けたい」という気持ちを喚起するか、ということである。それが一時の流行ではなく、長く子々孫々までが安心と感じられるような住環境を提供することこそが非常に重要な施策であると考える。そのためには、建物単体だけでの回答を模索するのではなく、住まい方、周辺自然環境、地域の資源まで見据えた包括的な取り組みが必要であると考え、その総体としての提案が「里山長屋暮らし」である。

●今後の予定について

 本提案は、これまでとは違った目線と展望が必要な住まい方のパラダイムシフトである。本提案は「いかにつくるか」ではなく、「住まい方をどう環境と地域のなかで位置づけるか」、である。そうしたことは建物だけを公開しても一般には浸透していかない。本件はブログやこうした住まい方を一緒になって勉強する講座などを開催しながら、こうした価値観の普及に努めて行きたいと考えている。
平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介
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