平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

　循環型社会の実現に向けて住宅の長寿命化は欠かせない要素であると考え、全国工務店ネットワークであるジャーブネットでは昨年春より、住宅供給を担う工務店が扱いやすく、また住まい手が価格的にも求めやすく且つ住まいの価値を実感できる普及型の長期優良住宅を研究、開発、試行、実践してきた。
　本提案では、普及型の長期優良住宅をベースに、(1) 工務店連携による技術・情報共有および建設・維持管理の相互補完、(2) 住まい手が負担する修繕費用を計画的かつ確実に確保するための修繕費用積立保険制度の整備、(3) 工務店向けサポートセンター設立による支援・確認・住宅履歴情報の一元管理、(4) 住まい手自らが住宅に愛着を持ち続けられるような提案の推進――という４つ仕組みの相乗効果を働かせて住宅の長寿命化を実現し、循環型社会に向けて積極的に取り組み、貢献していく。

1. 普及型の長期優良住宅
　住まい手が価格的に求めやすく且つその価値を実感できる長期優良住宅を実現するため、住宅事業合理化システム「アキュラシステム」を活用し、業務プロセス、技術、仕入れなどを合理化することで適正価格を追求する。
　これらの活動は全国工務店ネットワーク「ジャーブネット」ですでに取り組んできており、事務局であるアキュラホームが研究、実践してきている。これに加えて、各工務店の技術情報を共有し、オープン技術を最適に組み合わせることで、工務店が扱いやすい長期優良住宅を実現する。
　また、長期に渡る使用を意識し、地域環境や街並みとの調和を図り、建物自体もバランスに優れたデザインを住まい手のデザイン志向を否定することなく提案することで、普及型ながら中古住宅市場においても資産価値が認められるような普遍的デザインを「デザインコード」として推進していく。
　
2. 相互補完型ネットワーク
　普及型の長期優良住宅を確実・安定的に供給するため、工務店同士の相互補完体制を構築。住まい手に対して長期優良住宅の完成引渡しと長期にわたる維持管理を確実に行う。
　不測の事態などで建設・維持管理を他の工務店が担うことになった場合、円滑に引き継ぎがなされるよう仕上表などの業務フォーマットを予め共通化しておき、工事代金受取りには出来高による入金制限を設けておく。
　
3. 修繕費用積立保険制度
　住宅の長寿命化には住まい手の参加が不可欠になることから、定期点検や修繕活動が積極的に行えるような工夫も施している。具体的には、住まい手が負担する修繕費用を計画的かつ確実に確保するため、修繕費用積立保険制度を創設する。
　月額の保険料は負担が少ない金額設定としながらも、修繕に必要な費用を積み立てる。基本契約として10年程度を目安に必要費用を確保できる積立総合保険を用意したことに加え、オプション契約で20年程度を目安に必要となる大規模修繕費用を確保できる生命保険を活用した制度を用意した。また、緊急の修繕にも対応できる貸付制度を併せ持つのも特徴となる。
　
4. サポートセンターの設立と住宅履歴情報の一元管理
　工務店向けのサポートセンターを設立し、情報・技術提供、品質確認など工務店の長期優良住宅への取り組みを支援する。また、地盤調査・改良・保証、瑕疵担保責任保険、建築確認、住宅性能評価などの申込み・申請もワンストップサービスで支援する。さらに、住宅履歴情報をデータ化し一元管理することで長期にわたる保管をより確実なものとする。
　
5. 住まい手が住宅に愛着を持ち続けられる提案の推進
　自宅に愛着を持つことが住宅の長寿命化に貢献する考えのもと「しあわせデザイン」を推進する。固定した仕様や規定ではないが、“人と住まいのより良い関係”をテーマに、例えはフォトポジション (常に同じ位置で家族写真を撮影するためのポイント) の設定、思い出柱(柱に身長の記録を残す)、家族伝言板、手形アートなど、住まい手に合わせた「しあわせデザイン提案」を行う。

　全国工務店ネットワークであるジャーブネットはすでに10年以上にわたり住まい手に「良質で適正な価格の住宅」を提供してきた。ジャーブネットは地域工務店の活性化、住宅の高品質化・高性能化と適正価格化を目指した地域密着型の工務店集団である。いま、このネットワークの強みを発揮できる絶好の機会であり、住宅供給を担う工務店が扱いやすく、住まい手が価格的にも求めやすく且つその価値を実感できる普及型の長期優良住宅を建設・推進する上で最良のプラットフォームを持つと考える。ジャーブネットでは本事業に対し真摯に取り組み、日本の住宅産業界と消費者に貢献していきたい。