平成21年度 第1回 長期優良住宅先導的モデル事業紹介

　建物の存続期間を長くすると共に、維持管理の容易性、住まい手の維持管理に対する参加意識を高める様々な方策を講じた。
　さらに、住まいに愛着が湧き、地球環境の保全 (CO2排出抑制) に意識が向く景観・街並みの形成方法もあわせて提案した。

1) 建物の耐久性の向上
　住宅性能表示制度の劣化対策等級3の仕様である外壁仕上材裏面の通気確保に加え、壁パネルの構造用合板と成型断熱材の間にも通気層を設けるとともに、小屋裏空間に設置した第3種機械換気設備「エアリーン II」が、24時間365日、室内の換気を継続的に行いながら、小屋裏と壁体内の強制的な機械換気を同時に行い、建物の構造体の中の湿気を強制的に戸外に排気し、建物の耐久性を一層高める。(図 (2) 参照)
　
　2) 耐震性・変化に対応できる良質な居住空間の創出
　住宅のSI化を図るには、居室間の間仕切壁の中に耐力壁を設けないことが必須であるが、この条件で住宅性能表示制度の耐震等級3・耐風等級2を確保するには、建物の最外郭で壁量を確保するために高性能の耐力壁が必要になるとともに、耐力壁線間隔が大きくなるため、高剛性の2階床構面も必要になる。
　さらに、高耐力の壁・床が取り付く柱や梁の接合部には高耐力の構造金物が必要になる。
　これらに独自開発した壁倍率5の大臣認定を取得した耐力壁「エアパネル」、床倍率5の床組み、高い引抜耐力を有する柱脚・柱頭金物「Tロック II」、横架材接合金物などを採用し、高耐震化とSI化を両立させる。(写真 (3)・(4) 参照)
　また、将来の間取り変更を容易にする工夫としてパーティション間仕切や移動家具の採用が考えられるが、居室間の遮音性の確保を考慮し、本提案では居室間に「天井勝ち」「床勝ち」の間仕切部材を採用する。
　
3) 内装・設備の維持管理容易性を向上させる方法
　給水・給湯・排水配管にヘッダー工法を採用し、維持管理を容易にする目的で建物各所に点検口を設置するとともに、束を設置しない床下空間を作り、メンテナンス作業を容易にする。
　
4) 維持保全計画の作成
　「住まいの説明書」を作成し、住まい手が自ら建物のメンテナンスを行いやすくする。
　
5) 記録の作成および保存
　新築住宅の維持・修繕を行い、当該住宅の資産価値を長期に渡って維持していくには、新築時に建物がどの様にして作られたかを確認する術、すなわち建築工事時の情報の保管が重要である。一方で、住まい手は自身が購入した住宅の建築工事がどの様に進んでいるのか?といった様々な興味や心配があると考えられる。
　本提案で採用する工程管理システムは、現場管理者にノートパソコンとデジタルカメラを提供し、(1) 現場工程の自動作成と進捗管理 (工程管理)、(2) デジタルカメラで撮影した現場画像・検査画像の保管、(3) 施工業者の管理を行うツール「工程管理システム」を活用することで、デジタルデータによる新築時の工事記録の作成および保管が可能となる。
　ここで保管されるデータをもとに住宅履歴情報を作成し、住宅使用開始後の維持管理等に用いる情報源として活用する。
　
6) その他
　外構にセルフカスタムゾーン (住まい手が自分で手を加える部分) を設ける。その家に住まい手の好みが反映され、庭に対して愛着心が湧くとともに、庭の手入れや景観維持、隣接環境への刺激などに繋がることが期待される。
　さらにセルフカスタムゾーンの使い方の一つとして、庭に植えた樹木の苗木に対する植林事業主への募金制度を奨励する。
　苗木1本を自宅の庭に植えることで、ポプラの苗を40本植林事業へ供給する活動で、自分の庭に6本の苗を植える事により、1年間に家庭から排出されるCO2をオフセットできる。
　この制度奨励により、住まい手の地球環境保護意識が高まることを期待する。
　一方、構造体等に国産材を積極的に用いることで、地域の活性化および日本の林業の活性化につなげるとともに、輸送に関わるエネルギー使用量を削減し、CO2排出の抑制に努める。

　今後は、長期優良住宅認定に適合し、かつ以上の提案内容を盛り込んだ住宅の建築に取り組み、本モデル事業の実践、普及に努める。