第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介

　「住宅維持保全・流通情報研究開発コンソーシアム」は、地方にあって大企業のシステム傘下に入らない工務店等が住宅履歴情報を生成するシステムを個々に開発することなく、将来の中古住宅流通にも有効な情報管理の仕組みを提案している。学識経験者・設計事務所・施工会社・資材流通会社・ソフトベンダーらによるコンソーシアムを組織し、情報サービス機関による蓄積・活用のモデルを模擬的な第三者機関として検証し学識的に確認することで実用化レベルの実験を意図し、住宅の維持保全及び流通にかかる持続的な情報管理システムの事業化を提案した

　元来、仙台の中小企業のコラボレーションにより生まれた原型ソフト「エコノミー」は、画面中央に写真や図面などの画像を表示して分かりやすく、個々の使用者が自由に分類設定して使える「スタンドアロン型データベースソフト (以下DB)」である。
　超長期住宅1棟ごとに、重要部分部材や施工の情報、維持保全情報、改修情報などを、当該DB=【e家カルテ・エコノミー】に構築し、長期間にわたって管理・維持する仕組みと模擬的な第三者機関 (履歴情報サービス機関) によって情報が担保されること、および定期点検時期の自動アラームが発信されることを提案した。
　住宅履歴情報はHI-SO製の【e家カルテ・エコノミー】によって蓄積され、図面・写真・文書の相互関連が「見える化」されたDBの形で、住宅所有者、情報生成者、情報サービス機関に保管され、互いに情報維持を担保しながら超長期住宅維持保全のモデルを模擬的に作る仕掛けである。
　検証される提案内容は以下に列記する。

1. 長期住宅で使用する重要部材 (構造・雨仕舞・給排水) の製品情報をICタグに書込み、納品現場にて自動的にDB化して製造者確認を容易にする。住宅施工部材や工法のトレーサビリティ機能を充実させることで、信頼性は向上し住宅履歴情報の基本情報が現場サイドから生成されることが検証される。
   
   
2. 建築主体業者・工務店・設計事務所等が履歴情報を作成し、住宅所有者に【e家カルテ・エコノミー】を提供、同時に、情報サービス機関を模したコンソーシアム構成員の設計事務所が管理するサーバにバックアップデータを置き同期させる。
   　住宅履歴情報の管理は、超長期住宅の定期的な保守点検時期に所有者と施工者にアラームを発信し、確実な情報保全と対応の安心感を生み普及と流通に寄与する仕組みが検証される。。
   
   
3. パソコン1台で動作する【e家カルテ・エコノミー】は、住宅のライフサイクル情報を時系列で格納・更新でき、異業種・他業者がそれぞれに生成したデータを互換・統合できるという特徴を持つ。住宅の計画段階から建設→維持保全→流通をサポートするプラットフォームとして地域や工法にとらわれない情報管理システムである。。
   
   
4. 居住中の維持保全情報や改修時も同様に【e家カルテ・エコノミー】への記録・格納を重ねることでDBの更新と模擬的な履歴情報サービス機関への更新情報アップが自動化されることを確認、住宅履歴情報が更新され付加されている中古住宅をイメージした検証が行える。。
   
   
5. 施工者の情報や施工時情報が住宅所有者にいつでも検索できるDBとして保管されている状況は、当初施工工務店との信頼関係が世代を超えて継続され住宅に対する愛着や維持保全のきめ細かさにつながるものと考えた。。

　地方にあって、一定の品質を保ちながら長期に渡る住宅履歴情報を保全する仕組みを各企業 (施工会社・リフォーム会社等) がそれぞれ整備することは相当の困難が予想され、今回コンソーシアムのような共同体により実証を重ねながら自らのツールにしていくことが重要な意味合いを持つものであると確信している。
　今回、地方都市において実践的に打ち出せる機会に恵まれたので、良い検証結果をいち早く打ち出し、住宅履歴情報管理のデファクトスタンダードを目指すつもりである。