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第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介

平成21年度 平成20年度
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木造建築病理学・「既存ドック」システム

住宅医ネットワーク
〒501-3722
岐阜県美濃市常盤町2275-1
特定非営利活動法人WOOD AC内

●基本コンセプトについて

 提案システムは、すでに2006年より、岐阜県立森林文化アカデミー「木造建築病理学講座」において実践されている「既存住宅の長寿命化」のノウハウを踏襲し、既存住宅のストックを対象に、(1) 耐震補強、(2) 断熱強化による温熱環境の改善、(3) バリアフリー化を3本の柱として、調査・診断・改修設計・改修工事の流れを持って進めるものである。
 1995年の兵庫県南部地震に伴う阪神大震災後に改正された現基準法施行以前に建てられている住宅は多い。さらに遡って1981年(昭和56年)の基準法改正では、耐震基準が大きく見直されたが、それ以前の既存住宅は、高度成長期の大量生産の時期とも重なり、極めて耐震性の劣る住宅であると予測される。また1980年に規定された旧省エネルギー基準さえも、基準を満たす住宅は極めて少ないと推測される。また、当然のことながら高齢者になるほど築年数の高い住宅に住んでいる割合が高く、近年の地震災害でも高齢者の住む古い木造住宅の被害が目立つ。
 「既存ドック」システムは、建設時に住宅性能評価を受けていない既存住宅に対し、現状の性能を把握した上で、基本性能目標を超長期住宅先導モデル事業に示される基本性能の基準とすることにより住宅ストックの質を確保することを目的としている。つまり「既存住宅」の抱える問題を解決し、それらを「良質なストック」として整理するものである。そのために、既存住宅の現状を正確に把握して診断を下し、手術に相当する改修工事の計画を立案できる「住まいのドクター」と呼ぶべき職能を持った設計者「住宅医」の人材育成を行う。

●先導的な提案の内容について

  1. 非破壊検査機 (常時微動測定) による詳細調査を行い、精細計算によって現状建物の熱損失係数を把握し、耐震補強と断熱改修、居住性向上 (バリアフリー性能) を3本柱とする抜本的性能改修を行う。
  2. 既存住宅の現況図面を整備した上で構造フレームの許容応力度計算を行い、耐震改修後の性能表示耐震等級3以上を基本とする。
  3. 改修住宅は建設住宅性能評価を受けることで、既存住宅のストックの市場環境を整える。
  4. 建設住宅性能評価を機会に、以降35年間の維持管理計画書を個別に作成し提示する。
  5. 改修後、常時微動測定、温湿度測定、気密測定、室内の化学物質の濃度測定を行い、安全・健康・省エネで持続可能なライフスタイルの実現を確認する。
〈人材育成 および、中小事業者支援〉
  1. 岐阜県立森林文化アカデミーの支援を得て、地域の設計事務所・中小工務店から「住宅医」を育てる。
  2. 地域の設計事務所・中小工務店を「住まいのドクター」である「住宅医」として育てることで、同時に、地域に長期耐用住宅の維持管理の持続性を担保する環境を整える。
  3. 改修を機会に、中小事業者の既存住宅の評価と改修時の履歴作成、保管をおこなう。将来的に信頼できる第三者機関への維持管理業務委託を目標に、その第一段階として、現在十分とは言えない中小事業者の既存住宅に関する履歴情報の整備と、維持管理記録作成支援を「町の工務店ネット」が行う。
  4. 既存建物の性能分析とリフォームによる性能改修の提案によって、中小事業者に超長期住宅先導モデルに示される基本性能を普及させることにより、超長期住宅先導モデル仕様〈改修タイプ〉の標準化と普及を図る。

●今後の予定について

 本提案は、外装の改修など表面的な化粧直し的な既存改修ではなく、既存住宅をストックとしてとらえ、その建物性能を、建物の改修を機に抜本的に改善するところにある。ここで、設計時の情報の不足する既存住宅も含めて、性能表示を行い、「家歴」についてのトレーサビリティを確立していく。「住宅医」が、地域に十分に育つまでの間、当システムは当面、関西・東海地域に限定してその活動を行う。第一の理由は、この「木造建築病理学講座」の修了者で「住宅医」として機能する設計者が現状では、関西・東海地域に限られていることにあるが、本提案を実践しながら、並行して「住宅医」を地域に育てる人材育成の為のプログラムの運用も開始し、中小事業者のネットワークを広げてサポートできる範囲の拡大を図る。このように地域の中小事業所の設計者が、同時に地域の「住宅医」として機能することによって、かつてあった「いいものをつくって、きちんと手を入れて長く大切に使う」という思想を実現する環境を整えることに寄与したい。
第2回 超長期住宅先導的モデル事業紹介
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