第1回 超長期住宅先導的モデル事業紹介

　UR都市機構では、従来から良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を進めてきた。
　近年、地球環境や社会の構造は変化を続け、都市のあり方や一人ひとりの生活意識も変わりつつある。
　省資源・省廃棄を推進し、良質な社会ストックを形作るサスティナブルな建物の活用が注目されている。
　一方、住まい手のワークスタイルや、ともに暮らす家族のあり方が変わっても、同じ集合住宅に広さや間取りを変更して住み続けたいというニーズも高まっている。
　このような動きに応えるため、建物の骨組みである躯体や共用部分 (スケルトン) と、住宅の内装や設備 (インフィル) とを分離した、スケルトン・インフィル住宅 (SI住宅) の研究が行なわれてきた。
　UR都市機構でも、このSI住宅の経済性をより重視し、実用性と汎用性を兼ね備えた独自の機構型スケルトン・インフィル住宅 (KSI住宅) の実験・視察を長年に亘って推進してきた。
　平成10年度から具体の事業地区において試験的に実施してきたSI住宅も、技術的・経済的な試行を重ね、平成13年度からはKSI住宅としてその仕様等を標準化、全国の超高層住宅と都心23区の住宅について標準的に採り入れて実施してきており、その供給実績は、約40地区1万4000戸を越えた。

	「西ヶ原一丁目」の街並みは景観の維持にも配慮している

　今回のUR賃貸住宅「西ヶ原一丁目」も、国が進めている「長期優良住宅 (200年住宅)」の趣旨に鑑み、これまで蓄積してきた機構型スケルトン・インフィル住宅 (KSI住宅) のノウハウに加え、より耐震性や将来の可変性や更新性に配慮した設計を具体化し、「超長期住宅先導的モデル事業」に沿うものとして、供給するものである。
　具体的には─

1. 機構型スケルトン・インフィル住宅 (KSI住宅) の仕様に加え、さらに「先導的住宅モデル事業」に相応しい、耐震性、更新性等を有したものとする。
   
   
2. 一部の住宅については、将来の市場動向に合わせて、2戸1化や3戸2化等の住宅規模にも可変性を持たせた計画とする。
   
   
3. 老朽化した賃貸住宅団地等の再生事業として、従前居住者の方々のコミュニティを維持できるように移転計画に配慮する等はもちろん、従前の街の記憶を次世代へ継承できるよう「西ヶ原貝塚」や豊かな既存樹の保存等も行うなど、街並み景観の維持に寄与した計画とする。
   
   
4. 地区の周辺が、木造密集地域であることから、所管行政庁の要望等を踏まえ、周辺の広域避難場所に至る避難路の整備について、道路の拡幅や団地内通路の一体化等により併せて行い、超長期に住まい続けられる街としての防災性の向上にも寄与した計画とする。
   
   
5. さらに、UR都市機構が自ら住宅等を建設する部分だけでなく、民間事業者による住宅建設予定地においても、その連続的景観が継承されるよう「景観ガイドライン」を策定、計画条件にする等により担保する。

─等を盛込んだ計画としている。