第1回 超長期住宅先導的モデル事業紹介

　新日鉄都市開発は、かねてより、ストック型社会の形成に向け長寿命の良好な住宅市街地を整備していくことの必要性を認識し、長寿命住宅・街区の開発推進に取り組んできた。
　今回提案した「(仮称) グランリビオ高見弐番館」の開発に当たっては、産官学民協働による研究会組織を組成し、超長期住宅の実現に向けた研究を重ねてきた。
　その結果、先導的な材料・技術・システムを複合的に導入したハイブリッド超長期住宅「(仮称) グランリビオ高見弐番館」の事業化に至った。
　具体的な取り組みとしては、ハード面においては、基本性能として構造躯体の劣化軽減(劣化対策等級3)、耐震性向上のほか、住戸の可変性に対応するスケルトンインフィル設計等を採用。
　さらに、先導的な取り組みとして、新日鐵住金ステンレスが開発した高耐久のクロム系ステンレス鉄筋を採用することにより、建物の耐久性を飛躍的に向上させている (コンクリート中での普通鉄筋耐用年数の約20倍)。また、ソフト面の取り組みとして、長期修繕計画の策定のほか、建物の修繕内容を記録・保管する「マンション家歴システム」を導入する。

(1)高耐久ステンレス鉄筋の採用
　耐久性における先導的な取り組みとして、鉄筋そのものの耐食性の向上を図るため「クロム系ステンレス異形鉄筋」を採用する。
　本ステンレス鉄筋はエポキシ樹脂被膜鉄筋のように塗装などの表面処理の必要性がないため、施工現場においても普通鋼鉄筋と同様に取り扱うことができ、塗膜損傷もない。

	(仮称) グランリビオ高見弐番館

　また、コンクリート中でのステンレス鉄筋と普通鋼鉄筋の接触による異種金属接触腐食についても試験が実施され腐食を起こさないことが確認されており、超高耐久RC造構造物の鋼棒として適している。
　一方、ステンレス構造建築協会は、国土交通省住宅・建築関連先導技術開発助成事業の助成を受け、平成17年度からステンレス鉄筋を用いた超高耐久RC造の設計施工に関する技術開発を進めてきた。その成果を受け、新日鐵住金ステンレス (株) は、平成18年4月にクロム系ステンレス異形鉄筋について、建築基準法第37条第2号の大臣認定を取得している。
　なお、「(仮称) グランリビオ高見弐番館」では、外部環境にさらされ損傷を受けやすい部位 (屋上パラペット、バルコニー、外部廊下、外部階段、妻側外壁など) 及び耐震スリットの接続部にステンレス鉄筋を採用し、耐久性を向上させる計画としている。ステンレス鉄筋と従来の高耐久化技術の最適な組み合せにより、建築構造物全体の長寿命化を図る。
　
(2) 家歴システムの整備
　当社グループのマンション・ビル管理会社である日鉄コミュニティ独自のマンション家歴システム「OMSBI (Operations Mansion Service Business Innovation)」を活用していく。
　「OMSBI」は、マンションの維持管理スケジュールのほか、契約履行管理、修繕履歴等を管理するシステムである。
　修繕履歴については、当初計画された長期修繕計画に基づき、計画的な修繕計画を記録するとともに、日常の定期点検記録、修繕記録等の履歴のすべてを記録することができる。
　これにより、本マンションの所有者が中古住宅として売却する際、正確な物件内容および修繕履歴を購入検討者に提示することが可能となり、購入者の判断が速やかに行えることもメリットの一つとして挙げられる。家歴システムの普及が今後の中古住宅市場の更なる流動化につながるものと考える。

　「(仮称) グランリビオ高見弐番館」の取り組みは、住生活基本法に理念が示された良質な住宅ストック・居住環境の形成の実現への道筋を示し、確かな社会基盤づくりとして先導的なモデルとして役割を担い、今後のストック型社会への転換の契機となるものと自負している。
　超長期住宅の整備と合わせて、住宅の性能表示の開示や、ロングライフ化に向けた維持管理計画、家歴システムの整備は、資産価値の客観性を高め、結果として中古住宅流通市場に購入需要を呼び込むインセンティブとなるものと考える。このことは同時に、居住者の積極的な維持管理意識を醸成し、中古住宅の質の向上にも寄与するものと考える。
　新日鉄都市開発は、超長期住宅の取り組みを通じて、多世代にわたって継承できる良質な社会ストックの形成に貢献することを目指していく。